災害対策=耐震対策について

〜大田区政に関する世論調査から〜

 大田区では、二年に一回、区政に関する世論調査を行っています。
 
 継続的に行う設問に加え、その時々に、必要と思われる課題についての項目を加えています。

 平成18年9月に実施された調査では、通常の「定住志向」「生活環境の満足度」「区の施策への要望」に加え、「災害対策」として耐震診断の制度の認知度と助成制度が利用されない理由についてや、「ボランティア活動」についての設問が加わりました。

 大田区では、耐震偽装発覚後、平成18年度の予算に耐震診断と改修への助成を計上し、また、期の途中で、その制度の内容を変更し、区民が使用しやすいようにしています。
議会においても、耐震診断と改修の利用者が少ないことが取り上げられていましたが、これは、耐震助成制度ができた時点で予想できていた問題です。
 
 制度を利用する人が少ないのは、対象となる建物が、旧耐震基準で建てられた1981年(昭和56年)5月以前に建てられた築年数が少なくとも25年以上経過した建物であり、かつ、建物全体を新耐震基準にしなければ補助金がおりないため利用が進みません。築25年以上の建物に手を加えるとすれば、耐震強度をあげるためだけではなく、全体的なリフォームを行うことになるでしょうし、そうなると相当の費用がかさみますから、そうであれば、建て替えまで我慢しようというのが一般的ではないでしょうか。
このことについては、私も予算審議の際に指摘しています。

一方で、昨年発覚した耐震偽装の問題は、信頼の上に成り立っていた建物の安全性を根底から覆しました。

耐震データ偽造事件で、構造計算書を改ざんしたとして建築基準法違反などに問われた元1級建築士、姉歯秀次被告(49)に対し、東京地裁は12月26日、求刑通り懲役5年、罰金180万円の実刑判決を言い渡しています。

 地震の多い日本における耐震データの捏造は、私たちの生命・身体の安全に直結するもので、東京地裁は、「被告は、この規制の重要性を最も知る立場にありながら、職責に背いて犯行に及び、極めて厳しい非難を免れない」としています。

こうした悪意の偽装をチェックすることのできない現在の建築確認にも問題がないとはいえません。
民間の検査機関の問題点も指摘されていますが、最初に偽装したとされるグランドステージ池上の建築確認は、民間解放前であり、大田区で建築確認を行いましたが、偽装を見抜くことはできませんでした(提出された書類が正しく、その後偽装が行われたとしても、それを建築現場においてチェックする仕組みにはなっていません)。

今回の偽装発覚によって一部の自治体では確かめ計算を始めましたが、大田区も含め、ほとんどの自治体では、建築確認は、記入漏れや転記ミスなどのチェックで、構造計算の確かめは行っていません。今回の偽装発覚後、大田区でも計算ソフトを購入していますが、使用していないばかりか、使用できる職員もいない状況です。
一時は民間確認機関から自治体へ流れた確認申請も、また、民間確認検査機関に戻っていることを考えれば、自治体の建築確認を改善しただけでは、問題の解決にはならず、書類の保存期間を延ばすだけではない抜本的な制度の改革が求められます。

大田区の世論調査では、アンケート回答者の31.2%が旧耐震基準で建てられた住宅に住んでいるという結果が出ています。(わからないが13.8%)また、今回の偽装物件の発覚により、新耐震基準で建てられた建物にも、基準を満たしていない建物があることが推測されます。

過去に建設した建物の耐震強度を高めることは、さまざまな自治体が耐震診断や改修助成に取り組みながら、なかなか進まないことからも、非常に困難であることが分かると思います。

まちの防災機能を高めるためには、時間はかかりますが、これからのまちづくりについての明確なコンセプトを示し、それにむかって少しずつ進んでいくことが最も確実です。
例えば、大田区での狭わい道路の整備事業は、地道な取り組みですが、着実に成果を挙げています。

「防災対策」は22.7%の区民が望む「高齢者対策」に次いで二番目に高い今後取り組んでほしい施策になっています。