旧耐震基準の建物の安全性を高めるために

大田区耐震改修促進計画(素案)

 都市整備委員会において、「大田区耐震改修促進計画(素案)」の骨子について報告がありました。

 昭和56年(1981年)以前に建てられた建物は、耐震基準が現在の基準より低いため、耐震強度が十分に無いものがほとんどです。

 たとえば、大田区は、区内の住宅建物の総戸数31万6千戸のうち、現在の耐震基準を満たしている建物は、約23万9千戸と推計しています。
 オフィスビルや駅ビルなど、大勢の人が利用する建物は、区内に355棟ありますが、耐震基準を満たしている建物は275棟です。

 耐震偽装が大きな社会問題になりましたが、建物の安全という視点からは、偽装だけでなく、他にも問題があり、そのひとつが、この昭和56以前に立てられた旧耐震基準の建て物の耐震強度をいかに高めていくかというところにあります。

 区では、また、全国的にも、耐震偽装問題をきっかけに、旧耐震基準の建物の耐震強度を高めるために、
①「耐震診断」への助成
②「耐震改修工事」への助成 
③耐震強度確保のための工事への相談のためのコンサルタント派遣事業
などを行ってきました。

 しかし、現実には、耐震改修工事につながる件数は、制度スタート年度である
平成18年度は 0件 
平成19年度にようやく6件
と、区民に利用しにくい制度であり、耐震強度確保のために十分に機能していないことがわかります。

 区は、まちの防災機能を高めるため、建物の耐震強度を高めるための改修が進むよう計画をたてましたが、こうした現状をふまえ、さらにまちの安全性が高まる方策を講じた計画になっているでしょうか。

 これまでの取り組みは継続しながら、新たな取り組みとして特徴的なものは、
①「閉塞を防ぐべき道路」として、区が道路の指定
②優先的に耐震化をはかるべき建築物の選定
などです。

 特に①については、東京都が緊急輸送道路を指定し、建物の倒壊による道路の閉塞を防ぐ施策を出したことから、私も議会で提案してきましたが、計画的に取り組むことは、非難所や病院などと幹線道路とが災害時にもきちんと通じることにつながり効果が期待されます。
 今後は、区が指定した道路沿いについての耐震化が促進される誘導策が必要になってきます。

 区内の区有施設の耐震改修は終了していますが、民間の建物の中でも、私立の学校や幼稚園・保育園、大勢の人が集まる施設などは、優先的に耐震化を図るべきであり、そうした建物の選定は重要です。

 区では、優先建物の選定にとどめていますが、耐震改修の終了した不特定多数の人の出入りする建物については、区が耐震強度を満たした優良建物ということで、認証制度をつくり、ステッカーを発行するなどして、耐震強度の低い建物との選別をすることも有効かもしれません。
 結果として、お金をかけて耐震改修をしたことが資産価値を高めることにつながれば、停滞している改修促進につながっていくことも期待できるのではないでしょうか。
 
 一方で、マンションなど共同住宅の耐震化が、建て替えとともに、今後大きな問題になってきます。
 残念ながら、この計画では、共同住宅の耐震化にどのように取り組むかという視点が抜け落ちています。
 賃貸マンションと分譲とでまたその課題は大きく異なりますが、所有者の合意形成の困難な分譲マンションんの耐震化は、建替え問題とともに今後ますます大きな問題なっていくでしょう。
 これは、マンション管理組合が改修費用などを計画的に積み立てているかどうかなど、マンション管理組合の管理の方法や運営の実態とも大きくかかわってきます。

 区内に、昭和55年以前建てられた3階建て以上の非木造の共同住宅は、2970棟。(住宅・土地統計調査平成10年)
 
 耐震改修促進計画は、この共同住宅の耐震改修をどのようにしていくかという視点抜きには考えられません。
 共同住宅への対策をどうするかという視点を盛り込むべきです。


なかのひと