会社設立の是非と補正予算

 東京23区清掃一部事務組合(清掃一組)が合弁会社を設立するに当たっての出資金520万円が補正予算として第四回定例会に上程されています。
 
 第二回定例会において、区長が、出資方法は、23区の区議会そして区が関与するかたちで出資をするべきでありそのためには22対1になっても主張すると答弁したとおり、今回の補正予算の是非が、新会社設立の是非を問う位置づけであるはずです。
  
 しかし、既に9月の一部事務組合の議会において設立が決定しています。大田区での審議は設立後であり、各区の関与も形式的なものに留まったといわざるを得ません。
 実際、今回の会社設立にあたっての大田区の総務財政委員会における審議の際にも、既に一組議会において議決済みであるという、本末転倒、大田区議会としての判断を放棄した意見を主張する委員が少なくありませんでした。

 区長が、第二回定例会において答弁したとおり、本気で各区の関与を求め、意志を反映させた形にするのであれば、区長は、同時に、清掃一組の管理者でもあるのですから、9月の26日の清掃一組議会において拙速に新会社設立の是非を問うのではなく、各区の判断(議決)を待って清掃一組議会に提案するべきでした。

 しかも、今回この補正予算を提案したのは大田区長ですが、各区の関与と言いながら、大田区議会においてこの件に関する公式の説明の場は、都市整備委員会のみで、総務財政委員会において説明の無いままに議案が提案されました。
 清掃一組議会の前日に非公式に清掃一組からの説明の場がもたれましたが、これは、公式の説明ではなくあくまで非公式なものであり、また、大田区からの説明でもありません。
 
 こうした、形式的な手続きについて総務財政委員会において質問すると、決めてしまった一組の事業に大田区が関与できないと助役は答弁をします。区長の答弁は一体なんだったのでしょうか。また、今回の補正予算の議案提案は何なのでしょうか。
 
 当然、この補正予算の委員会における審議は、会社設立の是非を問うもので、大田区が出資するにふさわしい、参入するにふさわしい事業であるかどうかの審議をするべきですが、なかみについての審議はするものではないと助役・一部委員は、発言しています。

 なかみについて検証せずに、どのようにしてこの補正予算の支出が適正であるかどうかの判断をすると助役はいうのでしょうか。委員として判断するのでしょうか。
  
 会社設立による事業効果についての十分な説明もありません。

 有効であると言われている事業内容も、不透明な随意契約を前提とするものであり、透明性の確保(随意契約はせず競争原理をはたらかせる)について質問しましたがの大田区としての姿勢さえ明らかにされませんでした。
 
 設立前には、退職した職員を雇用することで人件費を抑制すると説明されていましたが(これも天下りなど問題ですが)、今では、現役職員を同賃金で派遣することになっています。人件費抑制を設立目的にしていたはずが、一組でそのまま雇用していればかからない管理コストまで上乗せされてしまいますから、費用削減さえ危ぶまれてきています。

 新会社は、これまでより電力を清掃工場から高く買うことができ、また安く23区の施設に売ることができるのがメリットであると言う部分も、そうであれば、他電気事業者は更に高く買い、また安く提供すると既に言っていると言う話もあり、新会社の事業の優位性は必ずしも確保できるものではありません。

 新会社と随意契約を締結することは、例えば市場価格のほうが有利であった時には、一部事務組合・或いは23区各区が、損を分け合う形になります。そして、それは新会社の損失としては当然計上されませんので、各区からは新会社の事業が各区に不利益を与えていることが見えにくいと言う点で更に問題です。 
 
 新会社の設立はあまりにも拙速であり、また、東京23区清掃一部事務組合を固定化するものになると考え出資について賛成しかねたため、補正予算からこの出資金520万円を除いた修正予算を提出しました。

 提出の手続きなど、修正動議の形式についての質問はありましたが、新会社の設立がこんなに良いものなのに修正をかけるのはおかしいという発言はひとつも無いままに、修正動議は否決され、本案が可決されました。賛成した委員の本案に対する賛成理由は、清掃一組議会で決まっているのでやむ終えないという消極的なものでした。
 
 やむを得ないだけで決定するべきものではありません。何かあったときには誰がどのように責任を取るのでしょうか。