葉山市・戸田市のゴミを減らす取り組み〜第15回とことん討論会②〜

 ゴミ処理のありかたや経済活動にどのように組み込んでいくかという学習も大切ですが、ゴミは減るのに清掃事業費は一向に減らない23区の特殊事情はさておき、自治体の中には、徳島県上勝町のように分別を細かくしてゴミ削減に取り組んでいるところもあります。
 場所が無い、ライフスタイルが違うなどという理由から大都市は無理と言われがちですが、それでも、東京近郊でゴミ削減に積極的に取り組んでいる自治体もあります。
 今、葉山市のゼロウエイストで注目されている葉山市と市民が生ごみから作った堆肥と花の苗と交換する戸田市の事例について話をうかがいました。
 
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【葉山市のゼロウエイスト】

 2008年に「脱焼却・脱埋め立て」を公約に掲げた町長が当選しそこからゴミ政策の転換が始まったそうです。
 葉山市の焼却炉は築30年と老朽化していて修繕費などがかさんでいるうえ、埋め立て処分場が無いため、群馬県まで運んで埋め立てているなど、ゴミに関わる処理費用が一般会計の13%と大変大きな割合を占め町民一人当たりに換算すると30000円にもなっていたことがその背景にありました。目安として自治体一般会計の5%程度と言われているゴミ処理費用ですから、処分場が無いなどの特殊事情があるものの葉山市のゴミ処理費用の占める割合が非常に高いことがわかります。自治体規模や都区の特殊な財政関係があるため単純比較はできませんが、ちなみに大田区のゴミ処理費用の占める割合は4.5%です。広域化することにより経費削減できると言われていますが、広域化したメリットも加味した場合の4.5%をどう評価するかは別の機会に譲りたいと思います。

 葉山市では、まず、隣接する横須賀市・三浦市との共同処理を目指した広域化協議会から離脱。そのうえで、ゴミ減量の先進事例を調査していきました。

 職員がゴミ組成調査を行い(ちなみに大田区では前回は区の職員が行いましたが、その前までは委託していました。)課題を整理したそうです。
 その結果、分別のルールが明確でないため、リサイクルが進んでいないことが判明しました。資源がゴミとして廃棄されているのです。
 
そこで、資源がゴミでなくリサイクルのルートにまわるよう
①分別をわかりやすくする
②分別した人が得するしくみを作る
③成果を実感できるしくみを作る
という3点に取り組むことにしたそうです。

 現在、葉山市では、現在の一日一人当たり排出量約660gから半分の330gを目標に、100世帯のモニターが減量に取り組んでいます。
 排出したゴミ量がわかるゴミ袋を配布し、分別を一緒に行って言ったところ92%が目標を達成できたそうです。

 実用段階では、ゴミ量がわかるゴミ袋を一定枚数無料配布したうえで、それ以上の排出については有料袋でお願いすることを考えている話されていました。

 葉山市では、ゴミ袋にちょっと意識を向けるだけでゴミが減ること。目標を見える化したことで効果を得られたととらえていますが、この仕組みを進めていくだけでは、ゴミはゼロにならず、ごみにしかならないものをいかに減らすかが課題であるとしています。
 最終的にはリサイクル率も「ゼロ」にすることが目標だと言うことですが、現在の生産・消費・廃棄のサイクルでは困難であり、EPR(拡大生産者責任)や前回報告した「サービサイジング」の考え方が重要になっていくでしょう。

【戸田市の堆肥と花の苗を交換する取り組み】
 
 戸田市でもゴミ焼却施設は老朽化しており、ゴミ削減が大きな課題となっていたそうです。そこで、ゴミに大きな割合を占めている生ごみをたい肥にしてもらうことにより、ゴミを減らそうと考えました。

 戸田市の発想がユニークだったのは、堆肥化できるコンポストなどへの助成では無く、堆肥化できるバケツと生ゴミ分解を促進するEMぼかしをタダで貸し出し、堆肥でいっぱいになったバケツを持参すると花の苗24鉢(=バケツに入る量だそうです。)と交換する仕組みを作ったことです。

 花の苗がもらえる事でリサイクルを楽しんで行える。しかもタダですから得をした気持ちになります。実際、焼却すればそれだけ費用がかかり税金を投入していたわけですから、焼却しなかった分だけ税金も使わなくてすみ税金も節約できます。

 また、苗作りは、障がい者の雇用の場となっていて、雇用も創出しています。

 現在は、年間3万鉢と取り組みとしては小さなものですが、将来は、野菜の栽培も視野に、事業展開を考えているそうです。

 
 【区長に望むこと】

 二つの事例は、いずれも、目標や効果を明確にし取り組んでいるすぐれた事例です。

 23区の場合、収集・運搬が区、焼却処分が23区が設立した「23区清掃一部事務組合」埋め立て処分が東京都と3層構造になっていて、それぞれが異なった目標や計画、管理体制で動いています。
 分別を細かくしゴミを減らしても、焼却費用や埋め立て費用を削減できたという実感に乏しいしくみです。

 23区の中に、これまでの焼却施設への持ち込み量を大幅に、たとえば半減させるなどしたうえで、埋め立て処分費用も含めた一部事務組合の分担金の変化との関係に問題提起できる区が一区で現れたなら、日本を代表する都市部のゴミ処理の構図が大きく変わると思います。
 大田区長には、是非取り組んでいただきたいと思っています。

  
なかのひと